聞きしにまさる

三浦和義事件 (角川文庫)

三浦和義事件 (角川文庫)

続けて三浦さん関連の本。島田荘司だし。
構成がなかなか凝ってて、最初に当時のマスコミ報道の総集編のような章があって、次の章に三浦さん視点の、いわば「真相編」が展開されています。ちょっと資料過多でうんざりするとこもないではないですが、全体としては面白くて一気に読めます。
ちなみに、島田荘司が著者ですが、ミステリ小説ではありませんので、御手洗潔による明快な解決編はありませんヽ(^^;)ノ。小説を読みなれた身からすると、すっきりしないというか答えを出してない終わり方ですが、それも作者の意図するところのようです。現実の事件はほとんどの場合きれいな答えは出ないものだってことをわかりなさい、ってゆう。これはやっぱり、ミステリ小説の大家である作者の責任の取り方ってことかなぁ。
ただ、いわゆる「大衆」は、この本の内容がほぼ真実だと悟ったとしても自責の念にかられたりしないと思うのです。「けっきょく自分の愛人に陥れられた」「自業自得」「自分の蒔いた種」、そういう評価を下すんだよね。「いじめられる子にはそれだけの理由がある」ってのと同じです。
冤罪事件ってわりとこういう構造をしてると思う。やっぱり冤罪被害者というのはそれだけの「理由」、言い換えれば「弱み」は持ってることが多いです。それと犯罪を犯すことは別でしょう、っていう正論が日本のマスコミには通用しないみたい。これを火のないところに煙は立たない、運が悪かった、って言ってしまって本当にいいのかな。そんなにみんな公明正大に生きてる、あるいは、自分の身には運悪くそういうことが起こるなんて思ってないんでしょうか。お話が足りてないのかなぁ。だから現実にきれいなストーリーを求めちゃうのかなぁ。
わたしなんかは後ろ暗いところありまくりの人生なので、近親者やお友だち各位には、くれぐれも怪しげな死に方をしたり事件に巻き込まれたりしないようにお願いしたいところですヽ(^^;)ノ。